日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年5月22日原稿から目を上げて話をしよう

この間、テレビのニュース番組を見ていると、地方局のアナウンサーが全国放送で流れるニュースを伝えていました。

外出自粛の中、その地方の経済を活性化するユニークな取組を全国に紹介する、というものでした。

ところが、そのアナウンサーは、初めて全国放送に出るからでしょうか、明らかにとても緊張している様子です。

笑顔がなく、顔もこわばっているように感じます。

そのためでしょうか、ニュースを読み始めると、頻繁に原稿を見ながら話しています。

ついには、半分以上原稿を見ながら話し始めました。

大丈夫かな、最後まで読めるかな、と、こちらもドキドキしながら画面を見ていました。



 

また、最近よくニュースで見かける大臣の記者発表の様子も気になりました。

ほぼ原稿から顔を上げず、書いてあることを読み上げているだけの大臣がいますよね。

この読み上げている画面を見ると、ああ、この人は自分が考えていることではなく、官僚の作った文章をただただ読み上げているんだな、ということが丸わかりです。

そうした会見にこの大臣のパーソナリティは感じられません。

もったいないことだなぁ、と思います。

 

こうした光景は、私たちの身近でもよくお目にかかります。

会社や学校の行事での来賓のあいさつ、結婚式での来賓の祝辞など、かなりの人が原稿を読み上げています。

その姿を見て、立派だな、と思う人は少ないでしょう。

 

日本話し方センターの話し方教室でも、スピーチ実習で原稿を見ながらスピーチする方がいます。

そうした時、講師は必ず次のようなアドバイスをします。

「突然話が飛ぶこともあるので、スピーチ原稿は持ってきておいた方がいいです。

次に話すことがわからなくなった時は原稿を見て構いません。

しかし、原稿を見たまま話をしないでください。

話す内容を確認したら、聞き手の方に目を向けてから話しを続けてください。」

 

話しをする時は、聞き手の方を見るのが大原則です。

原稿に目を落としたまま話すことは、自信がない、聞き手のことを見ていない、棒読みになる、など様々なマイナス要素があります。

何よりも、書いてあるものを読んでいるのでは、話し手自身の意思を感じることが出来ません。

話しをするということは、自分の考えや意思を伝える行為です。

なので、原稿に目を落としたまま話すことは絶対にしてはいけません。

 

でも、話すことは原稿に書いてあるので、それを見ないと話しができないじゃないか、と思われる方もおられるかも知れません。

しかし、人前で話しをする際は、事前の準備をしっかりとする、ということが大前提です。

基本的に、原稿がなくても自分の言いたいことは言えるまで、原稿を練り込み、声に出して練習すべきです。

それでも本番で話が飛んでしまうことがあるので、原稿は手元に置くべきなのです。

手元の原稿を見れば次に話すことは確認できます。

ああ、こういうことを話すんだった、と確認できたら、原稿から目を上げて堂々と話しを続けまょう。

話しは、ことば以上に見た目で聞かれます。

まず話す態度がしっかりしていないと、この人の話を聞こう、とは思ってもらえません。

そのためにも、原稿から目を離して話す、そうできるようにしっかりと事前準備をする、ということを心がけてください。
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