日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年8月10日言葉の真意を考える

今日は祝日ですね。

朝、何気なくテレビを見ていると、こんな話題を取り上げていました。

ある主婦が投稿したツィートです。

「夜ご飯しんどくて冷凍餃子にしたの。

長男が『ママ餃子美味しい!』って喜んでたの見て旦那がすかさず

『手抜きだよ。これは れ い と う っていうの』」

この主婦は旦那さんの発言にとても腹を立てて投稿したようです。



ネットでもかなり話題になっていて、様々な意見が書かれています。

テレビでは、この投稿をテーマに、

「あなたは冷凍餃子は"手抜き"だと思いますか?」

と、街頭でインタビューをしていました。

大半の人は、手抜きだとは思わない、という意見のようでした。

また、ネットで書かれている意見も、手抜きとはひどい、という意見が中心でした。

 

「手抜き」を国語事典で調べてみると、

「故意に踏むべき手順の一部を省いたり、使うべき材料を使わなかったりすること」

とあります。

この意味からすると、この旦那さんは、冷凍餃子は踏むべき手順を踏んでいない料理だ、ということを言いたかったということになるのでしょう。

因みに、味の素冷凍食品はこんなツィートを出しているそうです。

「冷凍餃子は『手抜き』ではなく『手間抜き』です。」

とてもセンスのいい表現だなぁ、と感心しました。

 

ところで、私はこの番組を見ていて、言葉って難しいなぁ、と思いました。

この旦那さんは、果たして、何が言いたかったのでしょうか。

「冷凍餃子なんか手抜き料理で宜しくない。きちんと野菜と肉をこねて皮に包んで焼いて欲しい。」と思ったのでしょうか。

「餃子は、野菜と肉をこねて皮に包んで焼くんだよ。」ということを子供に教えたかったのでしょうか。

それとも奥さんをちょっとからかってみよう、と思っただけだったのでしょうか。

 

私たちは日常、発した言葉が本心とは違うとらえ方をされてしまう、ということがよくあります。

特にいつも一緒にいてわかり合えている、と思っている家族との間にありがちです。

例えば、旦那さんが夕食に奥さんが作った鶏の唐揚げを、おいしいなぁ、と思いながら食べているとします。

その時、同じ肉料理で一週間前の夕食に出た豚の生姜焼きもおいしかったことを思い出し、

「一週間前の豚の生姜焼き、おいしかったなぁ。」と言ったとしたらどうでしょうか。

奥さんは、「生姜焼きはおいしかったけど、今日の鶏の唐揚げはおいしくないってこと?」と思ってしまうでしょう。

また、奥さんに「今日は何が食べたい?」と聞かれた時、旦那さんは、奥さんが作ったものならばすべておいしいので、「何でもいい。」と言ったとします。

しかし、これを聞いた奥さんは「夕食の献立くらい自分で考えてよ。」と言われたと思うかも知れません。

 

私たちはとかく言葉足らずの会話をしています。

言葉が本心を表しているとは限りません。

むしろ、言葉で気持ちや考えを適切に表すことができていることの方が少ないように思います。

 

冒頭のツィートの旦那さんも、餃子を作る手間を省くことは悪いことだとは思っていなかったかも知れません。

しかし、文字にして言葉通りに解釈すると、冷凍餃子を好ましくないと思っているとしか取れません。

人間はどうしても感情に支配され勝ちですので、とても難しいことではありますが、相手の言葉に感情的に反応しそうになったときは、本当は何が言いたいのか、冷静に確認できるといいですね。

この奥さんも「冷凍はダメなの?」と少し冷静に聞けば、旦那さんの思っていることがより正しく理解できただろうと思います。

 

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