日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年3月13日話したくなるネタを選ぶ

日本話し方センターの話し方教室ベーシックコースでは、授業が始まる前に来てもらえれば、講師が受講生にスピーチのアドバイスなどを行っています。

今週、教室に参加されたPさんも、早めに来て練習をされました。

しかし、練習をされた後、今一つ腑に落ちないという表情で、教室の外にあるテーブルで原稿を修正されています。

少し気になったので、

「よければ空いている会議室で声に出してスピーチ練習ができますよ。」

と声をかけたところ、すぐに会議室に行って練習をされました。

しばらくして会議室を出てきたPさんは少し晴れやかな顔をしています。

「練習して少し変化はありましたか?」

と伺ったところ、Pさんはこんな話をしてくれました。

「さっきスピーチをして先生からアドバイスをいただいたんですけど、どうも気持ちが乗らなかったんです。

実は話のネタを2つ用意してきたので、もう一つの話をさっき練習したんです。

そしたら、こちらの話の方が自分でも楽しく話せたので、授業の実習ではこの話にしよう、と納得できたんです。」

そして、その後の実習では、その2つ目の話を、Pさんらしい柔らかい語り口でしっかりと話してくれました。

 

話し方教室では、ネタ(材料)がないと話ができないので、日頃から話の材料を集めましょう、ということをお伝えしています。

つまり、ネタは話をするために必要不可欠なのでとてもたいせつですよ、と。

しかし、話をする上でネタが大切だ、ということにはもう一つ意味があります。

それは、スピーチが成功するかしないかはそのネタにかかっている、ということです。

自分で、この話は面白い、話したい、と思えるネタなら話す前からワクワクします。

本番でも前向きな気持ちで話せるので、余りあがることもありません。

一方、自分でも、今一つ面白くない、と思っているネタで話をする場合は、話していてもワクワクしません。

本番で話していても、みんなきっと面白くないと思って聞いているんだろうな、という感じがして、あがってしまうでしょう。

ネタの良し悪しが、スピーチの成功・失敗を決めるのです。

上のPさんの話は、その好例だと思います。

 

実は私も最近、ネタの大切さを実感した体験をしました。

先週、社員2万人以上の上場企業の幹部社員向けの研修の提案を行いました。

先方は担当役員、人事部長などの経営陣が出席する中、プレゼンを行いました。

大企業の役員や幹部を前にしたプレゼンは、緊張したりあがったりしがちですが、私はあがらずに話ができました。

それどころか、前日からそのプレゼンが楽しみで、早く話したい、と少しワクワクしていたくらいです。

私も普段のスピーチなどでは、話す前は緊張してソワソワすることもあります。

しかし、この日はそうなりませんでした。

それは、私がそのプレゼンで提案する研修のストーリーが、自分なりに説得力があって自信の持てるものにできた、と思っていたからです。

自分で納得できる内容だったので、その提案が通るかどうかはほとんど気になりませんでした。

そして、本番では余裕を持って、あがらずに話すことができました。

上に述べたPさんと同じように、納得できるネタで楽しく話ができた経験でした。

 

話し方教室では、人前であがらずに話すには、話したくなるまで練習することをお願いしています。

そして練習と同じくらい、話したくなるネタを選ぶということも大切です。
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