日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2020年5月10日状況に応じた話し方をしよう

新型コロナウイルスの新規感染者数が少しだけ落ち着いてきました。

とは言え、免疫力の弱い人が感染すると命に関わることになりますので、引き続き3密に気を配るなど、私たち一人ひとりが感染を広げないよう行動することが必要ですね。

さて、今回は、その場に合った話し方をしよう、というテーマでお話をします。



 

昨日、花粉症が悪化して鼻づまりがひどくなったので、病院で処方してもらってから、薬局に薬をもらいに行きました。

処方箋を窓口に出して待っていると、その薬局に別のお客様が来ました。

その人が出した処方箋を受け取ってから、マスクをした係の人がその人に話しかけました。

「ご来局されたのは初めてでらっしゃいますか」

私はそのことばを聞いた時、「ああ、この係の人はこの人に聞き返されるな」と思いました。

案の定、その人は係の人に「何ですって?」と聞き返していました。

こうした光景はよく目にしますが、話が聞き取れないのは意外にストレスを感じてしまうものです。

なので、今回はこの例を取り上げて、私たちが話をする際に注意すべきことを述べたいと思います。

 

私がこの係の人の話し方を聞いて、聞き返されるだろうと思った問題点は主に3つありました。

まず1つ目は、この係の人の声が小さかったことです。

近くにいた私もようやく聞き取れるほどの声でした。

今は店員さんはほとんどマスクをしていますね。

マスクをしていると、自分では普通に話しているつもりでも、相手に届く声は小さくなってしまいます。

ですので、普段よりも意識して少し大きめの声で話す必要があります。

言われてみれば当たり前のことかも知れませんが、このことを意識して話をしている人は少ないように思います。

マスクをしている時は、普段よりも大きめの声で話しましょう。

 

2つ目は、この係の人の滑舌がよくなかったことです。

これもマスクをしていることに原因があります。

マスクをしていると、していない時よりも声がこもって聞こえてしまいます。

なので、母音も子音も曖昧に聞こえてしまうことがよくあります。

私たちは、普段でも曖昧で聞き取りにくい話でも、多分こうだろうと推測しながら聞き取っています。

しかし、普段でも滑舌がよくない人がマスクをして話すと、推測できないほど発音が曖昧になってしまい、相手に聞き取ってもらえません。

特にマスクをしていると子音がぼやけますので、か行のK、さ行のS、た行のTなどの子音をかなり強調して発音するとよいでしょう。

以上、マスクをして話をする時は、大きめの声で、子音を強めに発音しましょう、ということを述べました。

 

3つ目は、聞き取りやすい言葉で話す、ということです。

これはマスクをしていることとは関係ない問題です。

「ご来局されたのは」ということばは、書かれたものなら意味はすぐにわかります。

しかし、普段私たちは「ご来局」などということばは耳にしませんので、このことばで突然話しかけられると、とっさに漢字が思い浮かばず、何を言われたのかわからないということになりがちです。

しかし、薬局の係の人にとって「ご来局」は馴染みのあることばなので、何気なく使っているのでしょう。

この場合は、「私どものご利用は初めてですか?」など、相手が聞き取りやすいことばで話しかけるべきです。

日本話し方センターの話し方教室では、「書きことば」ではなく「話しことば」を使いましょう、とお伝えしています。

「ご来局」は典型的な書きことばですね。

私たちは、自分が馴染みのあることばを相手がわかるかどうか考えずに無意識に使ってしまいますので、注意が必要です。

 

以上、私が出くわした光景をもとにお話をしました。

ちょっとした心配りが、話し方をよくし、コミュニケーションをスムーズにします。

参考にしていただければ幸いです。
>横田章剛のブログTOP