日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2020年10月21日「恋愛」の説明から「異性」が消えた

10月16日の新聞広告がネットで話題になっています。

「恋愛」の相手は異性だけじゃない、国語辞書の新聞広告が話題

三省堂の新明解国語事典の第8版が11月19日に発売されます。



話題になっているのは、その「恋愛」という項目の説明です。

まず、手元にある第五版の解説を見てみると、次のようになっています。

「特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。」

私たちが小学生の頃に使っていた国語事典とはかなり異なる、大胆で踏み込んだ記述ですね。

しかしこれが、今回の改訂では次のようになっています。

「特定の相手に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。」

表現は多少おとなしくなっていますが、「異性」や「男女」といった言葉は姿を消しています。

大きな変化ですが、現代を生きる我々からすると、第8版の記述に違和感を持つ人は少ないでしょう。

 

以前から新明解国語事典は、ユニークな解説で知られていて、多くのファンがいます。

この事典はそうした人たちから「新解さん」と呼ばれており、「新解さんの謎」という単行本が出ているほどです。

ちなみに、手元にある三省堂のスーパー大辞林3.0の「恋愛」の解説を見ると次のようになっています。

「男女が恋い慕うこと。また、その感情。ラブ。」

あまり面白みのない解説ですね。

こうして比較すると、新明解国語事典ははるかに読み物として面白いですね。

根強い人気の理由がわかります。

 

さて、このように言葉は、社会の認識が変わるとその意味も変化していきます。

言葉だけでなく、話し方も人々の認識の変化とともに変化していきます。

例えば、「上から目線」という言葉は今では誰でも知っていて普通に使っていますが、私が社会人になった40年前には影も形もありませんでした。

上司が偉そうに話すのは当たり前、と誰もが思っていたのです。

部下は呼び捨てで当然、仕事を指示する際も「~やってくれ。」で何の違和感もありませんでした。

しかし、時が流れ、上司は偉い、という認識はかなり薄くなってきました。

部下を「さん」づけで呼ぶようになりましたし、指示も「~してください。」と丁寧語で話すようになっています。

この流れに敏感になって、話し方を変えていかないと、相手の感情に沿わない話し方をしてしまい、自分が言いたいことが伝わらないということも起こり得ます。

 

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