2024年9月27日話す前に考える
1.常に考える
私が折りに触れて思い出す、とても大切にしている言葉があります。
それは『常に考える』という言葉。
岐阜県に未来工業という、とてもユニークな会社があります。
1965年の創業以来赤字なしで、働きやすい環境を整えることに注力していて、「日本一社員が幸せな会社ホワイト企業」という評判を得ています。
この会社が掲げている理念が、この『常に考える』です。
この会社の様々な取組のベースになっています。
社員一人ひとりが常に考えることで、会社が成長し、社員の幸せが実現できているのです。
2.話すことは考えること
ところで、日本話し方センターにも、これと似た言葉があります。
それは、『話すことは考えること』という言葉です。
私たちは普段、しっかりと考えずに話していることがとても多いです。
その結果、相手に話がうまく伝わらなかったり、場合によっては勘違いされて恨まれたりします。
話には、自分の気持ちや考えがそのままストレートに現れます。
従って、考えてから話すようにしないと、先に述べたように相手の気分を害したり、伝わらない話をダラダラとして相手の時間を無駄に奪ってしまうことになりかねないのです。
話し方の上達においても、常に考えることはとても大切です。
3.先日の私の体験談
先日、私がお手伝いをしている、ある会合に参加しました。
その際、事務局から、その会が開催しているイベントの告知をして欲しいと頼まれました。
1分程度のもので、事務局が作った原稿を読み上げるというものです。
快諾して原稿を受け取りました。
しかし、私はその原稿を見て、「これはそのままでは使えないな」と思いました。
同じことが複数回繰り返されていたり、告知のポイントは3点あるのですが、それがわかるような文書になっていません。
私は事務局の了解を得て、その原稿を書き直しました。
言葉の重複を極力なくして、伝えたいポイントが3つあることがわかるようにしました。
また、「この言葉の間に間を入れよう」「ここは少しゆっくりと高めの声で話そう」などと、話し方にも工夫して何度か声に出して練習しました。
そして、告知の本番。
自分が話したいと思える原稿に直したので、気持ちを乗せて話すことができました。
終了後、ある参加者から、
「とてもわかりやすい告知でしたね。他の人のとは全然違う。さすが、話し方のプロですね!」
とお褒めの言葉をいただきました。
このように、ちょっとした読み上げ原稿でも、事前に、「この内容で伝わるか」「どういう風に読めばよいか」と考えることで、より伝わる話ができるのです。
4.話のネタを集める
考えることの効果は他にもあります。
例えば、話のネタを集めることができるようになります。
2日間集中コースでは、受講生に2分間のスピーチをその場で3つ作成して話すトレーニングをしてもらいます。
テーマは、「失敗談」「うれしかった体験談」「この研修で学んで得たこと」の3つです。
しかし、受講生の中には、テーマに応じたスピーチ原稿がなかなか作れないという人がいます。
話を聞いてみると、なかなかこれらのテーマに合う話のネタが思いつかないとのこと。
スピーチのネタは、日常のちょっとした出来事に目を向け、それについて考えることでたくさんストックすることができます。
忘れ物や勘違い、人に感謝されること、感謝したことなど、私たちは日常生活の中でほぼ毎日体験しています。
しかし、私たちはそれらのほとんどを記憶に留めていないのです。
日常の出来事に目を向けた上で、
「自分はどうして忘れ物をしたんだろう?」
「どうして新幹線の席は3列と2列になっているんだろう?」
などと、疑問に思ったり考えたりすることで、話のネタは着実に自分の中にストックされていきます。
考えることで、話のネタを集めることができるのです。
5.聞き応えのある話にする
一方、話のネタが見つかってスピーチ原稿は書けても、そこには事実しか書かれていない、という例も散見されます。
先日の2日間集中コースの受講生は、要約すれば次の様なスピーチ原稿を作成しました。
- 自分のスキルアップのために、ある国家資格を取ることに決めた。
- テレビや遊びを控えて、毎日継続的に勉強した。
- その甲斐あって無事に資格を取ることができた。
このような話をしても、聞き手には面白くないので印象に残りません。
途中で聞いてもらえなくなります。
これを聞き手に聞いてもらえるようにするには、次のようなことを考えて話に加える必要があります。
- スキルアップしようと考えたきっかけ
- 毎日の勉強をしていた時の思い
- もうやめようと思ったが結局やめずに続けた理由
- 合格できた時の気持ち
- これからの資格の活かし方
これらについて考えたことを話せば、聞き手に興味を持って聞いてもらえる話になるでしょう。
人は、物事や話を理解する時に必ず感情が動きます。
聞き手の感情を動かすには、事実の羅列では不十分です。
自分の考えや気持ちを加えることが必要なのです。
6.ビジネストークでも常に事前に考える
考えることは、ビジネスにおける会話でも重要です。
単に事実を報告、伝達するだけでなく、そこに自分の意見や気持ちを添えることで、相手に理解してもらいやすくなりますし、話し手の人柄も伝わります。
例えば、
「R社に納品する商品が今日、P社から届きました」
という報告も、少し考えてから次の様に話すと全然違ったものになります。
「R社に納品する商品、予定より1日早く届きました。
P社は対応がいつも早いので安心です。
それに1日早く届ければR社の我が社への信頼も高まります」
この報告を聞けば、上司は、あなたが仕事のことをよく把握しており、取引先のこともきちんと考えていることが理解できるでしょう。
伝わる話をする、日常会話が上手くなるなど、話し上手になるためには、常に考える、常に感じる、という姿勢が欠かせないのです。
7.話し方教室で考えるコツをつかみましょう!
日本話し方センターのベーシックコースや2日間集中コースでは、聞き手に共感してもらえる話ができるようになるために、話の仕方とともに話の内容もアドバイスしています。
その中で受講生の考えていることや思っていることを引き出すご指導もしています。
ぜひ「受講者の声」をご覧の上、ご受講ください!