日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2021年10月21日相手に伝わる指示のしかたとは?

突然ですが、あなたに息子さんがいて、その子の部屋がこんな状態だったとします。



これを見たとき、あなたは息子さんにどのように言うでしょうか?
A:「ちゃんと片付けなさい」
B:「起きたら布団は元に戻してパジャマはタンスにしまいなさい。床にものが落ちていたら拾って片付けなさい。椅子は机の中に入れなさい」
多くの方はAの「ちゃんと整理整頓しなさい」と仰るのではないでしょうか。しかし、それでいいかどうか、Aの言い方とBの言い方を比較して見たいと思います。



この2つの言い方を「抽象的か具体的か」という観点で考えてみましょう。Aの言い方はBよりも抽象的です。何をどうすべきかは全く言わず、ごく大まかなことしか言っていません。従って何が問題でそれをどうすればいいのか息子さんが自分で考えなければいけません。一方、Bの言い方はAよりもはるかに具体的です。息子さんは何をどうすればよいか考える必要はなく言われたことをやればよいのです。

この2つの言い方のどちらが適切かは息子さんの「整理整頓」に対する理解度によります。息子さんがある程度常識や分別がつく年齢で自分がどうすべきかわかっているのであればAの言い方でいいでしょう。(実際に息子さんが「片付けよう」という気になるか否かはここでは置いておきます)一方、息子さんが小学生くらいで何をどうすればいいか今一つちゃんと理解していない場合はBの言い方でないと問題は解決しません。

上の例は、息子さんに対する親御さんの言い方を例にしましたが、この「抽象と具体」は、仕事上のコミュニケーションでも意識すべきことです。細谷功さんの著書「『具体⇄抽象』トレーニング」に面白いことが載っていました。それがこちらの図です。



仕事を依頼する人(以下、「上司」とします)と依頼される人(以下、「部下」とします)の認識の違いを図にしたものです。部下が抽象的な言い方でも自分で考えて仕事が出来るなら、上司は抽象的な言い方で充分で「任せるのがうまい上司」と思ってもらえます。また、部下が具体的に細かな指示が欲しいと思っている場合に、上司が細かな指示を出したときは「面倒見のよい上司」と思ってもらえるでしょう。これらは何れも上司と部下の認識レベルがあっているのでコミュニケーションはスムーズです。

しかし、部下が抽象的な言い方でよいと思っているのに上司が具体的な指示をしてしまうと、小うるさい上司だと思われてしまいます。(「マイクロマネジメント」)また、部下が具体的な指示がないと動けないのに上司が抽象的な言い方しかしないと相手は「丸投げされた」と不満を持ってしまうでしょう。

このように、相手の理解度や能力に合わせて具体的に言うべきか、抽象的な表現でよいのかが変わってきます。取引先やメンバーに仕事の依頼をする場合は相手にきちんと動いてもらわないといけません。私たちは往々にして自分の言いたいことを自分の認識レベルで語ってしまい、相手がどのように聞きたいかということを意識しないことがよくあります。その結果、指示がきちんと伝わらず、お互いにストレスを感じてしまうのです。こうした事態を避けるために、相手の「抽象と具体」のレベル感に合わせた話し方をぜひ意識してください。
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