日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2024年10月27日同じことを何度も言おう

 

1.同じことを何度も言う


私は、同じことを何度も言うことはとても大切なことだと思っています。

あなたはこれを読んで、

「えっ! 同じことを繰り返すのは、上手な話し方とは言えないんじゃないの?」

と思われたかも知れません。

確かに、その通りです。

しかし、私が言いたいのは、自分が大事だと思っていることやぜひ実行してもらいたいことは、何度も繰り返して言うべきだ、ということです。



「これから大事なことを言います。一回しか言わないからよく聞いて」

このような話し方を時々耳にします。

とても大事なことなので注意深く聞いて欲しい、という思いから、緊張感を持たせるために「一回しか言わない」と言っているのでしょう。

しかし、一回言っただけで相手にきちんと伝わるでしょうか。

 

別の例として、経営者や部門長が、会社や部門の方針や自身の考え方を話すことがあります。

しかし、そういうことを一度話した後、その後の朝礼などでその話を繰り返して言う人はほとんどいません。

実際、

「この話は以前にしたから、社員に『なんだ、この間聞いた話じゃないか。もう知っているよ』と思われないために、同じ話はしないようにしている」

と数人の経営者から聞いたことがあります。

でも、この伝え方で方針やトップの考え方が社員に伝わるでしょうか。

 

2.ありがちな思い込み


上の2つに共通しているのは、話をする人にありがちな思い込みです。

その思い込みとは、

「自分が話したことを、相手はきちんと聞いて覚えている」

ということです。

実は、話を聞いている時、人は集中して聞いているようで、聞いていないのです。

人の話を聞きながらも、

  • (今日のお昼に銀行に行かなきゃ)

  • (あっ、あの件、課長の耳に入れて置いた方がいいな)


など、ついつい別のことを考えてしまうことは、誰にでもあることです。

そして、そんな別のことを考えている間は、話を聞くことがかなりおろそかになっています。

そう。話をしている人が思っているほど、人は話を真剣には聞けていないのです。

 

別の要因として、話が長くなるほど、聞いている人は集中力がなくなっていきます。

長い話ほど聞いてもらえないし、記憶にも残してもらえません。

これらが原因となって、話をきちんと聞いていない人は相当数いるのです。

 

また、話をきちんと聞いたとしても、その話をいつまでも記憶している人は少ないでしょう。

そもそも『大事な話』だと思っているのは話をしている人であり、聞いている人がその話を大事だと思うとは限りません。

聞いたけれど、それほど大事だと思わなかった話は忘れてしまうのが人間として自然なことです。

これらのことから、話をする人が思っているほど、聞いている人は話を聞いていないし、覚えてもいないのです。


3.大事なことは繰り返して言う


上に述べた理由から、自分が大事だと思うことは、何度も繰り返して言わねばなりません。

トップが組織の方針や自分の考えを伝える場合であれば、朝礼で1回だけ言うのではなく、その後も何度も話さねばなりません。

また、リーダーがメンバーに実行して欲しいことがあるなら、ミーティングで1回だけ話すのではなく、その後も折りに触れて同じ話を繰り返さねばなりません。

但し、漫然と何度も同じ話を繰り返しても、相手には聞いてもらえませんし、記憶してもらえません。

繰り返すにしても、少し工夫する必要があります。

そのポイントは主に2つあります。

 

4.繰り返し言っている、と自ら言う


一つ目は、何度も同じことを言っている、と自ら言うことです。

  • 「以前から何度も言っていることですが、とても大事なことなので、繰り返し伝えます」

  • 「今日も同じ話をします。少しお付き合いください」


その人の人柄によって言い方は様々ですが、以前から同じ話をしている、ということをはっきりと言うことが肝要です。

これを言わないと聞いている人に

  • (前から何度も聞いている話だけど、覚えていないのかな?)

  • (また同じ話してるよ。もう社長もいい歳だから自分が何を話したのか忘れたんだな)


と思われてしまい、話している人への信頼感がなくなっていきます。

話に集中してもらうために、また話の重要性を理解してもらうために、分かっていて敢えて同じ話をしている、ということを伝えることが大切です。


5.キーワードを話す


二つ目は、キーワードを話すことです。

  • 「我々の事業の本質は、人に自信を取り戻してもらう、ということです」

  • 「ぜひ『常に考える』ことを意識してください」


人は長い話を聞いても記憶する際には、その主旨を短い言葉にします。

それをここでは『キーワード』と表現しています。

例えば、話をしていて相手から

「要するに△△ということが言いたいのね」

と言われることがあります。

この例のように、人は聞いた話の要旨を要約して短い言葉で覚えようとするのです。

であれば、最初に話の主旨をキーワードにまとめて話し、その後で解説や説明をすれば聞き手の理解は格段に進むでしょう。

また、キーワードは覚えやすいので、話の主旨を記憶してもらえる確率も高くなります。

リーダーにとって、自分の思いや方針を社員に伝え、記憶に留めてもらうことはとても大切なことです。

そのために、大事なことは何度も繰り返して言いましょう!

 

6.伝え方を基礎から学びましょう!


日本話し方センターのベーシックコースでは、様々な人が、様々な場面で応用できる話し方、伝え方の基礎を3ヶ月かけて、しっかりと身につけていただいています。

その成果は多くの受講生が実感されています。

ぜひ受講者の声を確認の上、ご受講ください!
>横田章剛のブログTOP