日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2019年5月22日人間はAIに対抗できるか


最近、社会的にAIやロボットに対する関心が非常に高まってきています。

皆さんも、これらの言葉を目にしない日はないでしょう。

少し前に、面白い本を読みました。「AI vs 教科書が読めない子どもたち」という本です。

作者は、東京大学に合格するロボット「東ロボくん」を作ろうという企画のプロジェクトリーダー、数学者の新井紀子さんです。

この本にはこんなことが書いてありました。

AIやロボットは、基本的に四則演算をベースにした計算機を駆使しているので、文章などの意味を理解したり、文脈を読んだりすることは絶対にできません。

チェスや囲碁、将棋の世界チャンピオンに勝ったのは、厳格なルールがある中で、どう動けばいいかを膨大なデータをもとに割り出しているに過ぎない。

つまり、自ら考えているわけではなく、あくまで、最適なパターンを大量のデータをもとに「計算」しているのです。

従って、厳格なルールが決められない世界では、AIやロボットは活躍できないのです。

考えて見ると、コンピュータは謂わば「サイエンス」の世界の産物であり、人間はその本質において「アート」の世界に住んでいると言えます。

ここでいう「サイエンス」と「アート」の違いは、再現性の有無で分けられます。

つまり、1+2=3という計算は誰が何回やっても同じ答えが出ます。これが「サイエンス」の世界。

一方、人が楽器の演奏をするときは、同じ曲でも微妙にスピードや音量、聞き手が感じるニュアンスなどが異なります。これが「アート」の世界です。

人間も「サイエンス」の世界の仕事をしてるものがあります。

その代表例が、数字の取り纏めや経理の計算、人事の給与計算などでしょう。

一定のルールのもとに行われるこれらの仕事は、確実に近い将来、AIなどに取って代わられると言われています。

しかし、人間の営みの中で「アート」に属するものは、今の所、AIなどには取って代わられないのでしょう。

だから、我々はそうした領域で世の中に貢献できるものを早く見つけて、身につけるべきなのです。

そして、その代表例が、「コミュニケーションの取り方」だと私は思います。

ベストセラー「嫌われる勇気」にも書かれていることですが、人の悩みは全て人間関係に関するものです。

そしてその人間関係は、コミュニケーションの取り方に大きく左右されます。

ここで言うコミュニケーションは、話の仕方や聴き方だけでなく、言葉に表れ、相手が感じ取る話し手の気持ちや価値観なども含んだ概念です。

これらの何かが欠けても、いい人間関係は作れないのです。

このコミュニケーションの取り方に磨きを掛ければ、人に良い影響を与え続けることができますし、その役割はAIなどに浸食されることはありません。

そして、コミュニケーションの中でも重要なものが、話し方、聴き方だと思います。

人はあらゆる場面で直接話すことでコミュニケーションを取ります。

そして、その時に言い思いをすることもあれば、嫌な思いをすることもあります。

嬉しかったことでも、カチンとしたことでも、以前に人から言われた言葉が、その後もずっと頭に残っている、ということは意外に多いものです。

言葉に消しゴムは効きません。一度自分の口から出た言葉は、相手の感情が動いてしまえば、撤回など絶対にできません。

そういう意味で、我々は言葉の重みを常日頃から意識しなければならない。

これは、日本話し方センターでお伝えしていることです。

言葉は我々人間が「アート」としての存在である限り、磨きを掛けていかなければならないものです。

是非、皆さんも相手に言い影響を与える話し方を身につけることを考えて見てはいかがでしょうか。
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