日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2019年10月13日話が長い訳

先日、ベーシックコース全12回の講座のうちの3回目が行われました。

受講生の皆さんには、コース受講後、初めて本格的に人前で行うスピーチです。

聞かせていただいて少し驚きました。皆さん、3回目にしてはとてもお上手だな、と思ったのです。

受講生によってバラツキはあるものの、多くの方があがり症を抑えて、しっかりと聞いている人の方を見て、「え~」「あの~」ということばぐせも出さずにお話をされていました。

とは言え、まだ3回目ですので、受講生の皆さんには、様々な改善の余地があります。

その一番のポイントが、制限時間2分に対して、多くの人が2分20秒~2分40秒ほど話したことです。

つまり、話が長いのです。

これを読むと、たった20秒~40秒なんてたいしたことないのでは、と思われる方も少なくないかも知れません。

しかしながら、実際に2分を超えるスピーチを聞いていると、多くの方が、長いな、と感じると思います。

それは、余計なことを話しているからです。

話し方センターでは、「必要なことを、必要な時に、必要なだけ、話す」ということをお伝えしています。

余計な話をすることは、聞き手に、話が長い、と思われるだけでなく、話がわからない、と思われることにもつながります。

話はなるべく短くした方がよいのです。2分のスピーチであれば、話は2分で終わらせなければなりません。

では、3回目でスピーチをされた受講生の話のどの部分が余計なのか?

それは、「前置き」です。

例えば、話したいことが、

「あわてて家を出たので、鍵をかけるのを忘れてしまった。どんなに急いでいるときでも、落ち着いて今何をすべきか考えるべきだと思った。」

ということだとします。

こうした場合、多くの受講生は、前置きにこうした話をされます。

「その日は、高校時代にとても仲がよかった友人5人と10年振りに会うので、ずっと楽しみにしていた。

その友人たちとはクラブがずっと一緒で、県大会出場を目指して高校3年の夏まで、毎日毎日、お正月も夏休みもなく厳しい練習を耐え抜いた。

県大会には出場できなかったけど、その時にできた絆はとても強いものになった。

私が東京に出てきてなかなか会う機会がなかったので、ついに会える、と思うと、うれしくてたまらなかった。」

実は、この前置きで必要なのは、「高校時代にとても仲がよかった友人5人と10年振りに会うので、楽しみにしていた」という部分だけです。

その他は2分間のスピーチでは余計です。

2分間のスピーチでは、だいたい500字くらいしか話せません。多くのことは話せないのです。

このスピーチでは、あくまで「あわてていても落ち着いて確認しよう」ということが言いたいのです。

であれば、前置きはできるだけ短くして、何故あわてて家を出たのか、鍵をかけ忘れた時はどんな心理状態だったのか、結局家は無事だったのか、などを具体的にはなさねば、聞き手には伝わりません。

「あわてていても落ち着いて確認しよう」ということを聞き手が理解するために、それに必要なことだけを話さねばなりません。

そのためには、先に述べた長い「前置き」は不要です。高校の時にどういう活動をしていたかは言わなくてもよく、楽しみにしていたことが聞き手に伝わればそれでよいのです。

「言いたいこと」と「人に聞いて理解して欲しいこと」は異なりますが、残念ながら、多くの方はこのことを意識して話をしていません。

特にあがり症の人は前置きで不要なことを話しているうちに、自分でも何が言いたいのか分からなくなり、余計にあがってしまうという傾向があります。

ぜひ言いたいことを理解してもらうために必要なことだけを話す、そのために前置きに必要なことだけを話す、ということを意識していただきたいと思います。
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