2024年10月30日わかりやすい依頼や指示をする秘訣とは?
1.話には必ず目的がある
人が話をする場合、必ずその話をする『目的』があります。
- 「上司に事実を正確に理解してもらいたい」
- 「夫に自分の話に共感してもらいたい」
- 「出席者に自分の意見に納得して賛成してもらいたい」
- 「初対面の人に自分の名前を覚えてもらい、良い印象を持ってもらいたい」
あなたは、この話の目的を意識したことはありますか?
例えば、あなたに部下がいて、その部下がお客様に提出する資料に誤った数字を記載したとしましょう。
もしあなたがこの部下に対して、
「なんで君はミスばかりするんだ!」
と叱ったとしたら、どうでしょう。
部下は謝ることしかできず、反省にも再発防止にもつながらないでしょう。
一方、あなたが話す目的を意識して、次の様に話したとします。
「期日通りに資料ができたし、文章もわかりやすいね。
ただ、数字の見直しをキチンとしないと今回のようにお客様に迷惑をかけるからその点、注意してもらいたい」
きっと部下は反省して「二度と同じ間違いをしないようにしよう」と思うことでしょう。
この場合の話す目的は、部下が二度と同じ過ちをしないようにしたい、ということです。
後者はその目的に沿った話し方だと言えます。

2.受講生Kさんの悩み
ところで、こうした『話の目的』の一つに
「自分の言ったとおりに動いてもらいたい」
ということがあります。
特にビジネスの世界では、部下や関係者に自分の言ったとおりに確実に動いてもらえるように話すことはとても大切なことです。
しかし、私たちは人に動いてもらうための話が上手く伝わらず、相手が思うように動いてくれない、ということがよくあります。
ベーシックコースを受講中のKさんの悩みも、部下への依頼や指示がきちんと伝わらず信頼を得られない、ということでした。
「私が部下に仕事を依頼したり指示したりする度に、部下から『よくわからないんですが・・・』と言われてしまうんです」
Kさんは、こうしたことを改善したいと思って話し方教室を受講されています。
Kさんだけでなく、部下への指示や依頼の仕方で悩んでいる人は大勢います。
どうしてこういうことが起こるのでしょうか。
3.「わかるだろう」という思い込み
人間の行動とは極めて具体的なものです。
例えば、課長が課のメンバーに対して、「何でも相談して欲しい」と言ってもメンバーはその通りには行動しないでしょう。
「レベルの低い相談をしたら恥ずかしい・・・」と思ってしまい、相談することをためらってしまうからです。
一方、
「自分だけで5分間、黙って考えて解決しないことはすぐに相談して欲しい」
と具体的に言えば、メンバーはどういうことをいつ相談すればいいかわかるので、安心して課長に相談するでしょう。
私たちは普段、この「何でも相談して欲しい」といった、抽象度の高い話し方をしていることがとても多いのです。
それは、言った人は「何でも相談して欲しい」と言えば、「何でも」と言っているのだから気軽に相談できるだろう、と思っていまうからです。
しかし、これは単なる思い込みに過ぎません。
言われた方は、上に述べたようにレベルの低い相談はできない、と思ってしまうので気軽には相談できないのです。
このように、『言った人の思い込み』は職場のあらゆる所で見られる現象です。

4.「動詞表現」と「動作表現」
ところで、この『人に動いてもらう話し方』ことについて、興味深い考え方があります。
浅田すぐるさんというコンサルタントの著書「すべての知識を『20字』でまとめる」という本に書かれている、『動詞表現』と『動作表現』という考え方がそれです。
『動詞表現』とは、人の行動を抽象的に表現したものです。
上の例の「何でも相談して欲しい」が該当します。
この表現では、何をどのようにすればいいのかわかりません。
なので、言われた人は実際の行動にはなかなか移せません。
- 「今期の目標を意識しよう」
- 「整理整頓を励行しよう」
というのも『動詞表現』ですね。
これに対して『動作表現』というのは、聞いた人が行動に移せるレベルの表現です。
上の例の「自分だけで5分間、黙って考えて解決しないことはすぐに相談して欲しい」は動作表現です。
また、上に述べた『動詞表現』を『動作表現』にしたら、次の様になります。
- 「今期の目標を意識しよう」→「朝出勤したら今期の目標を書いた紙を声に出して読もう」
- 「整理整頓を励行しよう」→「帰宅する際は机の上に何も残さないようにしよう」
先に述べた受講生Kさんは、まさにこの『動詞表現』で部下に話していたので理解されなかったのです。
受講後、Kさんは『動作表現』で具体的に話すことを心がけていて、部下から「わからない」といわれることがかなり減ったとのことです。
人に行動を促す際には、ぜひ『動作表現』で具体的に伝えることを意識してください。

5.日本話し方センターは「動作表現」でご指導しています!
ところで、日本話し方センターのベーシックコースや2日間集中セミナーでは、講師は『動作表現』で受講生の方々にアドバイスをしています。
「家でスピーチ練習をしてください」ではなく、
「家で声に出して、30回以上、時間を計ってスピーチ練習をしてください」
と具体的な動作レベルで伝えています。
また、「もう少し高い声で話した方が、声の通りがよくなりますよ」ではなく、
「地声が『ド』の音だとすると、『ソ』か『ラ』の高さで話してください」
とアドバイスしています。
こうしたことも70年以上続いている日本話し方センターの強みです。
その効果は多くの受講生が実感されています。
ぜひ「受講者の声」をご確認の上、ご受講ください!