少し前にベーシックコース受講生のSさんから相談を受けました。Sさんは会社で接客部門に所属しています。コロナ感染拡大で出勤が少なくなり、オンライン会議で勉強会を頻繁にやっています。その勉強会でSさんが5分程度の発表をすることになりました。テーマは接客に関する本を読んでその感想を述べるというものです。
「本は読んだのですが、200ページもある内容をたった5分で話すために何をすればいいのか全然イメージできないんです。どうしたらいいですか?」
本を読んでその内容について発表するということは多くの方が経験されていると思います。皆さんならSさんにどういうアドバイスをしますか?

この相談を受けて私がまず考えたことは「この勉強会の目的は何だろう?」ということです。接客部門の勉強会ですから「お客様にどのように接するべきか、サービスをどのように提供すべきか」ということを学ぶことが目的でしょう。では、この「学ぶ」というのは具体的にどういうことか。私は常々、研修やセミナー、勉強会などは、参加した後に学んだことを実行することが大切だと思っています。具体的な行動につながらない学びは価値がないのです。なので、私はこの勉強会の学びは参加者が勉強会終了後「今度これをやってみよう!」と思えるものを一つでも二つでも見つけることだと考えました。Sさんの発表を聞いて何人かが「今度これをやってみよう!」と思えるような発表にできれば成功では、と考えたのです。

ここまで考えて、私はSさんに次のようにアドバイスしました。
「その本の中でSさんが印象に残っているメッセージがあると思います。本のすべての内容を要約するのではなく、そのメッセージだけを材料にしましょう。そして、そのメッセージが印象に残ったということは、Sさんが過去にそのメッセージに関連した体験をしているはずです。その体験を話ながら、選んだメッセージが改めて大切だと思った、という話をすれば、他の人の共感を得られるのではないでしょうか」

私が、体験談を踏まえた話にしてはどうか、とアドバイスしたのには理由があります。聞き手が「今度それ、やってみよう!」と思うには、話に共感してもらうことが不可欠です。そして、共感してもらうには実際の体験談と本の内容をつないで話すのがとても有効です。体験談を交えると、聞き手は話を頭の中で映像化しやすいので、その話を踏まえた自分の行動がイメージしやすいのです。

ところで私が行ったアドバイスは、日本話し方センターで伝えていることを応用したものです。各コースでは2分間のスピーチ実習があります。2分間はとても短いので余計なことは一切言えません。その代わり大切なことは聞き手が頭の中にイメージを浮かべることができるくらい具体的に話さねばなりません。そのためにはスピーチに取り上げた話題全てを話すのではなく、一場面をピックアップしてそこだけ具体的に話すのです。私はこの手法を応用してSさんにアドバイスしたのです。

以上はあくまで私の考えです。こうした質問には決して正解はありません。Sさんが「なるほど、話のイメージが湧いた」と思えるアドバイスであれば何でもよいと思います。実際、Sさんは私の上の話を聞いて「何を話せばいいか、イメージが湧いてきました!」と笑顔で言ってくれました。

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