私はアタックスが主催するセミナーや企業の社内研修で講師を務める機会があります。その際、研修の冒頭に必ず取り入れるワークがあります。それは「自分の話す姿を見てもらう」というものです。

ビデオやスマートフォンで自己紹介をする姿を撮影し、それを再生して見てもらうのです。ほとんどの人は、自分が人前で話す姿を見たことがありません。なので半分以上の人が少なからずショックを受けます。
「こんなに『え~』『あの~』を連発しているとは思わなかった」
「自分では笑っているつもりでも笑顔がなくて愛想のない表情なのが恥ずかしい」
「目がキョロキョロしているし体も動いていて落ち着きがない」
「声が小さくていかにも自信がなさそう。今まで全然気付かなかった」
感想は様々ですが、皆さん一様に自分が話している姿のぎこちなさにガッカリされます。
すべての学びは「今自分がどういう状況にあるのか」適切に自己認識することから始まります。自分はできていない、と心から認識することが学びの出発点です。自分はできている、と思っていることは決して真剣に学ぼうとはしないからです。そしてこの自己認識の方法として、話し方のトレーニングでは自身の話す姿を確認してもらうのが一番わかりやすいのです。自分の話す姿を見たほとんどの人は、上に述べたように危機感を持ちます。そうした危機感を持ってセミナーを受けてもらうと取り組み姿勢も違いますし、改善度合いも全然違ってきます。「「『え~』『あの~』を取りたい」「落ち着いた態度で話したい」など目標がとても具体的になります。
ところで、話し方は頭で考えただけで変えようとしても絶対にうまくいきません。本を読んだだけで、また、人の話を聞いただけで話がうまくなる人を私は見たことがありません。話し方は体に覚え込ませて初めて上手くなります。自転車に乗れるようになったり、泳げるようになったりするのと同じです。話し方は「知識」ではなく「スキル」なのです。スキルだから体に覚え込ませる必要があります。そしてスキルだから、誰でも一所懸命にやれば必ず上手くなるのです。
さて、スキルを磨くにはトレーニングが必要ですね。話し方のトレーニングは、当然のことながら、とにかく「話す」ことです。日本話し方センターの各コースでは、体に覚え込ませるために何度も何度もスピーチの練習をしていただきます。もともと苦手なことですから継続してトレーニングするのは忍耐力がいります。その辛いトレーニングを継続させるモチベーションとして、最初に自分の姿を見てもらうことはとても有効なのです。自分の姿を見て問題意識を持ってもらい、その後のトレーニングに積極的に取り組めば話し方は必ず改善します。
上に述べたように、話し方はスキルですから、効果的なトレーニングをすればするほど上達するのです。ところで、話し方の上達には「上手くなる」という面の他に「幅が広がる」という面もあります。優しく語りかけるように話すことが上手くなった人が次のステップとして、自分の考えをきちんと伝える力強い話し方ができるようになれば話し方の幅が広がります。それらの話し方を時と場合によって使い分けることで、より説得力のある話ができるようになります。
何れにしてもねその最初のステップが自己認識です。ぜひご自身の話す姿を一度ご覧になってみてください。