私はアタックス・グループのグループサポート本部という、会社の内部のあらゆることを取り仕切る部署の責任者を長年務めました。
人事関連も担当していましたので、中途採用面接も、のべ300回以上行いました。
今回は、その経験を通して、私なりに考える自己アピールで大切なことについてお話します。

例えばこのようなやり取りがあったとします。
応募者をYさんとしましょう。
私:「いただいた資料を見るとYさんは工夫しながら仕事をするのが好き、ということですね。」
Y:「はい。学生時代にアルバイトしている時から『これってもう少し簡単にできないかな』などと考えるのが好きでした。」
私:「そうですか。実際に工夫した例はありますか?」
Y:「はい。バイト先で毎日店長が現金の残高を確認する時、お札や硬貨の数を数えて電卓で計算していたので、それをExcelで簡単にできるようにしました。」
私:「なるほど。他にはありますか?」
Y:「ええ。私は常に工夫することを意識してきたので色々ありますが、一番記憶に残っているのは先ほど申し上げたExcel化の話です。」
皆さんはこのやり取りをどう思われますか?
私は過去にもこうしたやり取りを何度も経験してきて、その度に、残念だな、と思っていました。
私が残念に思う点は主に2つです。
1つ目は、工夫した例の話がとてもあっさりしている点です。
私が質問で確認したいのは、Yさんの人柄や価値観、志向、思考力などです。
何をしたか、という事実を知りたいわけではありません。
現金の残高計算をExcel化した際の次のようなことを知りたいのです。
・なぜそうしようと思ったのか
・その工夫をする上で気をつけた点はどういうことか
・工夫した結果店長の反応はどうだったのか
・その反応を見てYさんはどう思ったのか
こうしたことをこのエピソードの中で話してもらえると、Yさんの人となりや思考力などをうかがい知ることができます。
2つ目は、他のエピソードを話さないことです。
実際の面接でも「他にありませんか?」と質問しても答えが返ってこないことがよくありました。
その場合、残念ですが、面接の印象はよくない、と言わざるを得ません。
それは質問に答えなかったから、と言う単純なことではないのです。
工夫を常にしているのなら、それに関するエピソードが3つ以上あってもいいはずです。
それが言えないということは「口で言うほどには工夫をしてきてないな」と判断せざるを得ないのです。
エピソードを幾つか聞くと、私の頭の中にそれらの具体的な事実を集約した抽象概念ができてきます。
そうすると、私はYさんのことを理解できるようになります。
「ああ、Yさんは本当に工夫を色々としているな。そしてそれは少しでも人の役に立ちたい、と思っているからだな。」
という風に。
自分自身をきちんと理解してもらうには、まず過去のエピソード=事実をしっかりと集めることが必要です。
人の役に立ちたい、チャレンジすることにワクワクする、など言葉で色々とアピールをしても、それを裏付けるエピソード=事実がないと、相手は本当にそうなのか判断が出来ないのです。
日本話し方センターのベーシックコースや2日間集中セミナーでは、上に述べたことをそのまま受講生にお願いしています。
話し方教室では面接ではなくスピーチを行います。
スピーチのネタは体験談が一番話しやすいし、聞き手にも聞き応えのある話になります。
なので、体験談のネタをたくさん集めるようお伝えしています。
そして、そのネタにおける、当時の気持ち、今振り返って考えていること、を入れて話してください、とお願いしています。
面接やスピーチは、あなたが何を感じ、何を考えたのかを話すことがとても大事です。
これらがない話は単なる報告なのです。
これから採用面接を受けられる方の参考になれば幸いです。