「私は働き方改革に対応するために、一人ひとりが仕事の改善を考える必要があると思っています。
そうしないと、仕事の効率化は実現できません。
そして、そのために社内に提案制度を作る必要があると考えています。
これについて、皆さんの意見を聞かせてください」
皆さんがこのように問い掛けられたら、何と答えますか?

上のような質問は、特に会議で頻繁に聞かれます。
この質問に特に違和感を感じなければ、「賛成です。」と簡単に答えるでしょう。
しかし、しっかりと考えて意見を言おうとした場合、「何だか答えにくいなぁ。」と思うのではないでしょうか。
なぜ答えにくいのでしょうか?
私は、こういう場面に遭遇すると、必ず次のように質問します。
「今、『これについて』と仰いましたが、その『これ』は何を指していますか?」
上のような質問に答えにくいのは、「これ」という指示代名詞が何を指しているのかが曖昧だからです。
「この」や「その」という指示代名詞は、我々の会話の中で、実に頻繁に使われています。
しかし、この指示代名詞が会話の内容を曖昧にしているのです。
上の例では、「この」が指しているのが、
① 働き方改革には一人ひとりが仕事の改善を考える必要があること
② 一人ひとりが仕事の改善を考えないと仕事の効率化は実現できないこと
③ 社内に提案制度を作ること
のどれなのかわかりません。
そのため、聞き手は思考が停止してしまい、意見を言おうにも言えなくなってしまうのです。
それでも、この質問に対して意見を言う人はいます。
そういう人は、「この」がどれを指しているのかは気にせず、上の発言の中で自分が気になった部分に焦点を当てて発言します。
「提案制度はいいけど提案が出るような工夫がいると思います。」
「仕事の効率化は事務フローを設計している部署に任せてはどうでしょうか。」
「仕事の効率化のためには事務のIT化が必要です。」
こうした意見は大切ですが、バラバラに発言されたのでは、意見をとりまとめて結論を導くことが難しくなります。
上の例では、①~③の3つのテーマ(論点)があります。
まず①について異論がないか確認します。
異論がないようなら②でよいか、というテーマに移ります。
そして②で良ければ、最後に③をテーマとして議論します。
この順番を意識することで、はじめて論理的な議論ができるのです。
しかし、このような議論の順序を意識せずに会議などを進行しようとすることがよくあります。
その時に「これ」などの指示代名詞が登場します。
指示代名詞は、物事を明確に言おうとして何となく言いにくい場合によく使われます。
「あのさぁ、あれってどうなったっけ?」
といった会話は日常よく耳にします。
お互いにその指示代名詞が何を指しているのか、誤解なく認識が一致しているのなら問題はありません。
しかし、人が何を考えているのか、どのように理解しているのか、ということは中々推し量りにくいものです。
指示代名詞はなるべく使わない、使う場合も相手が誤解していないか確認する、ということを意識すると話が曖昧になったり話が噛み合わないということは減っていくでしょう。
ご留意いただければ、と思います。