話が苦手な人は「上手く話したい!」と思っている人が多いですね。淀みなく話す、笑顔で余裕を持って話す、わかりやすく話す、など。しかし、上手く話す以上に考えていただきたいことがあります。それは相手の心を動かす話をするということです。いくら上手く話しても、その話に納得したり共感したりしてもらわなければ話をする意味はないでしょう。特にビジネスの世界では、相手の心を動かした上で自分の意図したとおりに動いてもらうことが重要になります。今回は人に動いてもらうように話すにはどうしたらよいか、ということについてお話します。
この話をするにあたり、ご紹介したい本があります。浅田すぐるさんというコンサルタントの著書「すべての知識を『20字』でまとめる」という本です。とても参考になることが書かれている本で、私は折りに触れ読み直しています。その中に、人に行動してもらいたいなら「動詞表現」ではなく「動作表現」を使うということが書かれています。

私たちは日頃から人や組織に動いてもらうために話をしたり、文章を書いたりしています。しかし、思い通りに人や組織が動かないということは実に良くあることです。浅田さんはその原因の一つに我々が一般的に「動詞表現」を多用していることを挙げています。
「動詞表現」とは、例えば、
・目的を意識しよう
・組織に浸透させよう
というものです。一般的によく使う表現ですね。しかし、この表現ではどのように動けばいいのか、具体的な行動がわかりません。
これに対して「動作表現」というのは、
・朝出勤したら意識したい目的が書かれた紙を必ず見よう
・組織に浸透させたいメッセージを毎日全員で唱和しよう
というものです。浅田さんは、このような「行動に移せるレベルの表現」を用いるべきだと説いています。
人間の行動とは極めて具体的なものです。単に「曲がれ!」と言われても、どこでどちらに曲がればいいのかわかりません。「次の交差点の手前を左に曲がれ!」などと具体的に言われないと道を曲がることもできません。しかし、私たちはビジネスにおいてこの「曲がれ!」レベルの話をしていることがとても多いのです。それは、この状況で「曲がれ!」と言えば次の交差点の手前を左に曲がるだろう、と勝手な思い込みがあるからです。しかし、他の人が自分と同じ判断をすることを安易に期待することはできません。人の判断は人それぞれなのです。なので、いくら言っても他の人は思うように曲がってくれない。言った人は「何故曲がらないんだろう・・・」と思っている。この例え話のようなことが職場で日々繰り広げられているのではないでしょうか。
人を動かすにはぜひ「動作表現」で具体的に伝えることを意識してください。
ところで、日本話し方センターのベーシックコースでは、この「動作表現」で受講生の方々に行っているアドバイスしています。「家でスピーチ練習をしてください」ではなく「家で声に出して30回以上、時間を計ってスピーチ練習をしてください」とお願いしています。また、「もう少し高い声で話した方が声の通りがよくなりますよ」ではなく、「地声が『ド』の音だとすると『ソ』か『ラ』の音で話してください」とアドバイスしています。こうしたことも70年近く続いている日本話し方センターの強みなのです。その効果は多くの受講生が実感されています。ぜひ「受講生の声」をご確認ください!