日本話し方センターのベーシックコースには就活生の方がよく受講されます。私はそうした人に面接のアドバイスをすることがあります。先日も受講生のTさんにアドバイスをしました。就職活動の面接であれば、一般的には次のようなアドバイスを期待されると思います。
「こういう質問をされたらこのように回答しましょう」
「大きく明るい声で話しましょう」
「始めに結論を言いましょう」
しかし、私はTさんには「感情豊かに話すことは大事ですよ」ということを伝えただけで、それ以外の話し方に関するアドバイスは一切しませんでした。なぜならば、Tさんは
・自分はどういう働き方をしたいのか
・どういうことを大切にして生きていきたいのか
ということがかなり曖昧だったからです。なのでTさんにはこれらのことを自分なりに整理するよう伝え、その具体的な方法を伝えました。面接で相手に伝わる話をするためにはまず上に書いたことを整理して話せるようにしておくことが必要なのです。

人間は良くも悪くも感情の動物です。何かを判断するとき人は必ず感情が動きます。従って論理的に話す場合でも相手の感情を動かすように論理を使わなければなりません。一方で、話し手にも感情があります。納得できないことや余り気が乗らないことを話すと、その迷いや少し冷めた気持ちがそのまま話し方に表れてしまいます。それが聞き手にも伝わってしまいます。逆に納得できていることやぜひ伝えたいと思っていることを話す時には、意図しなくても話し方に迫力が出てきます。この迫力が出ると聞き手を話に引き込むことができます。

なので、話す場合にはまずしっかりと考えて、納得できる構成やストーリー、言葉を組み立てて「この話がしたい!」というものにすることが必要です。この準備をすることで熱意を持って話すことができるベースが整います。そして、それが相手に伝わるように話し方のテクニックを磨きます。いくら聞き手に共感、感心してもらえる内容でも、聞き逃すくらい早口だったり、「え~」「あの~」を連発して集中して聞けないような話し方ではきちんと理解してもらえません。

話は「考える力」と「伝える力」のかけ算で決まります。私はTさんは、社会で働いていく上での価値観やこれからの生き方ということについてもっともっと整理する必要があると感じました。就職面接に対するアドバイスをする人は、冒頭に書いたようなテクニック面を主に指摘されるようです。しかし、私は就職活動においては上に述べた自分の価値観などをしっかりと把握して整理しておくことがとても重要だと思っています。
自分がこれから社会人として活躍する上で大切なものは何なのか。仕事の種類、組織風土、扱う商品など、何を重視するのか。また、自分が働いていく上でこれだけは絶対に必要だ、逆にこれだけは絶対に嫌だ、というものは何か。
こうしたことをしっかりと考えることで、悔いのない選択をする確率が高まります。また面接でどんな質問をされても堂々と答えることができます。

就職面接に限らず、話をする前にはまず話す内容をしっかりと考えましょう。

日本話し方センターでは、様々なご要望にお応えするために、プライベートレッスンを受け付けています。話す内容を考えることもサポートしています。ご興味のある方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。