日本話し方センターのベーシックコースを受講する就活生が多くなってきています。就職面接をクリアするとともに、社会人として活躍するために今から話し方を勉強しておこうという目的の人が大半です。ベーシックコースのカリキュラムは就職面接に焦点を当てたものではありませんが、話し方やコミュニケーション全般を対象にしたものです。受講された就活生はそれぞれに気付きや学びを得て、見事に内定を勝ち取られています。

私は、過去、日本話し方センターが所属するアタックスグループの人事責任者として長年採用面接に携わってきました。少なくとも400回以上の面接は行っています。その経験をもとに就活生が面接対策としてやっておくべきことを、ベーシックコースで伝えていることを交えながら解説します。

目次

面接官は何を見ているか

話し方で最も大切なことは相手の立場に立って考えて話すということです。就職面接でも、まず面接官がどういうことを聞きたいと思っているのかを理解することはとても大切です。因みに私が面接を行う場合は、次のことを意識しています。
・人柄 ~ 温厚か、前に出るタイプか、社交的か、おっとりタイプか など
・価値観 ~ 出世したいのか、自身を成長させたいのか、人の役に立ちたいのか など
・タイプ ~ リーダータイプか、ナンバーツータイプか、役割をきっちり果たすタイプか など
・能力 ~ 物事の理解力があるか、粘り強さがあるか、責任感があるか など
・相性 ~ 我が社の組織になじむか、他の社員が一緒に働きたいと思うか、我が社の理念に共感できるか など

上に挙げた観点は多くの面接官に共通したものだと思います。まずこれらの項目をしっかりと意識してください。

自分を掘り下げる

面接官が応募者のどういう面を見るかということを頭に入れたら、次に行うことは、それらについて自分はどうなのか、しっかりと考えることです。
これまで数多くの面接をしていて強く感じることは、多くの応募者は、
・自分はどういう働き方をしたいのか
・どういうことを大切にして生きていきたいのか
・どういう仕事、どういう組織だと力が発揮できるのか
といったことをきちんと考えていないということです。ベーシックコースでは「話すことは考えること」と伝えています。事前に話すことをしっかりと考えて組み立てないと、相手に理解してもらえる話はできません。

話は「考える力」と「伝える力」のかけ算で決まります。就活生は、社会で働いていく上での価値観やこれからの生き方ということについて、時間をかけて整理する必要があります。自分がこれから社会人として活躍する上で大切なものは何なのか。仕事の種類、組織風土、扱う商品など、何を重視するのか。また、自分が働いていく上でこれだけは絶対に必要だ、逆にこれだけは絶対に嫌だ、というものは何か。こうしたことをしっかりと考えることで悔いのない選択をする確率が高まります。また面接でどんな質問をされても堂々と答えることができるのです。

過去のエピソードを掘り起こす

自分を掘り下げると書きましたが、実は材料が何もないと自分のことであってもなかなか掘り下げるのは難しいのです。ベーシックコースでは、人に伝わる話をするためにはとにかく話の材料を集めるよう伝えています。就職面接の対策においても材料集めはとても重要です。ではその材料とはなんでしょうか。

それは過去の自分の経験です。

その人の考えていることや感じていることは行動にハッキリと表れます。口では色々言うことはできるので、言ったことだけでその人を判断することは難しいのです。自分を掘り下げる作業も過去の自分の行動を材料にすれば考えやすくなります。

これについて、ベーシックコースを受講した就活生のMさんの例で説明しましょう。
Mさんは、大学3年生の時に中国に留学した経験がありました。それだけではMさんの特徴はわからないのですが、留学した理由を聞くと「色々な価値観を持っている人と話をするのが好きだし、特に中国の人にとても興味がありました。日本でもネットで情報は取れますが現地に住んで直接その国の人と接して様々なことを理解したいと思ったんです」という答えが返ってきました。
この答えから、Mさんには「好奇心が旺盛だ」「事実を自分で直接確認しようという姿勢がある」「行動力がある」という特徴があることがわかりました。このように一つのエピソードを材料に「何故?」と自問自答していくことで自分を掘り下げることができるのです。

また別の受講生のDさんは過去の自分について次のように話してくれました。
①高校の時、物理の公式の本質まで理解して解くようにした。これは誰でもできることではなく自分なりのユニークさを出したかったからだ。
②小学生から今まで友達は多かったし、今も友達と関わることが楽しい。
③小学校高学年の時、友達と秘密基地を作るのに熱中した。自分たちだけの落ち着ける空間を作るのが楽しかった。
これを受けて私は、Dさんに「友達とはどういう存在ですか?」と確認したところ「自分にとってなくてはならないものですが、自分と似たような人が多いですね・・・お互いに競い合う存在かも知れません」という答えでした。
これらの材料から次のことが考えられました。
・①と③から、Dさんは自分の個性を活かした、自分だからできるユニークさを大切にしている。また、何かを創り出すことにとても興味がある。
・②と③と追加の応答から、Dさんにはお互いに切磋琢磨する存在が不可欠である。
Dさんに確認すると「ああ!とてもしっくりきます!」とのことでした。
このように幾つかのエピソードや事実を組み合わせることで、あなたの個性や特徴がより明確になります。

自分の考えや気持ちを具体的に話す

過去のエピソードをもとに自分を掘り下げることができたら、それらのエピソードを相手に理解してもらいやすい話に組み立てる必要があります。ベーシックコースのスピーチ実習で一番力を入れてアドバイスしていることが、自分の気持ちを入れて具体的に話すということです。自分の気持ちや考えのない話は単なる報告であり、聞き手には余り響きません。また抽象的な話はイメージが湧かないので聞き手は興味が持てません。就職面接での受け答えもこの点がとても重要になります。

例えば、学生時代に力を入れたこととして「私は1年生からずっと居酒屋でアルバイトをしています。現在は店長をしています。気をつけていることは常に自分ができることを見つけて自分から動くということです」と話したとします。この話、何となく言いたいことは分かりますが、具体的にどんな風に気をつけたのか、なぜ4年間も続けたのか、店長に抜擢された理由は何か、ということがこの話ではよくわかりません。こういう話をする人は、より具体的な話を聞こうと質問しても明快な答えが返ってこないことが多いのです。結果として面接官はこの人の人柄や思考力などを把握することができません。とても残念なことですね。
ですので、次のように整理して話せばそうしたリスクは少なくなるでしょう。
「私は4年間、居酒屋でアルバイトをしました。学費を稼ぐ必要があるからなのですが、接客がとにかく楽しいからです。お客様に笑顔で「ありがとう!」と言われると、楽しく過ごしていただくお手伝いができたなととても嬉しくなります。アルバイト中は作業の効率化を常に考えています。シフト表をExcelで作ったり、手が空いていれば洗い場を手伝ったりしています。その結果、半年前から店長を任せされました」
こういう話をすれば、人柄や考えていることもある程度わかります。興味が出てきて面接官も更に詳しく聞きたいという気持ちになるでしょう。

時間をかけて準備することが大事

今まで面接に必要な対策を述べてきましたが、これらは一朝一夕にできるものではありません。時間をかけて常に考えることで新たな気付きや発見がありますので、地道に取り組んでいただきたいと思います。

ベーシックコースで話し方を学ぶ

日本話し方センターのベーシックコースは、冒頭に述べたように多くの就活生にも受講いただいています。話し方やコミュニケーションの取り方を学ぶことで、就職面接に応用していただけますし、就職後の社会人としてのコミュニケーションの取り方なども身につけていただけます。ぜひ受講をご検討ください!