最近、日本話し方センターに会社様から社内研修開催のご依頼が増えてきています。会社様によって研修の目的やご希望などは様々です。それらに応じてできるだけ効果が上がるカリキュラムをご提案して開催しています。また、ベーシックコースや2日間集中セミナーに社員を派遣いただく会社様も増えてきています。このように、社員が講師を務める研修ではなく、社外の講師を招聘したり外部で開催されているセミナーを活用することは、参加される社員にどういう効果があるのでしょうか。今回はこのことについて私が考えていることをお話します。

目次
★研修を開催するのか?
そもそも研修はなぜ受けるのでしょうか。自分の仕事ができるようになるためには、仕事中に上司や先輩に教えてもらったり、仕事をしながら自分で調べたりすれば、それなりに仕事ができるようになるでしょう。しかし、それだけではスキルの向上は限定的です。なぜならば、日頃の仕事にだけ焦点が当たっているので、少し違う仕事を任されると、同じような質の仕事はできなくなるからです。「より多くの報酬を得たい」「人に認められてより高い地位に進みたい」などを望むなら、今の仕事の幅を広げたり、他の仕事もできるようになったりしなければなりません。例えば、経理の仕事をしているのであれば給与計算など人事系の仕事もできるようになる、また、経理の知識を活かせる税務関係の仕事にチャレンジする、など。つまり自分を成長させなければならないのです。しかし、現実問題として私たちは自分の仕事以外のことはなかなかやろうとはしません。それはどうしてでしょうか。
◎「7つの習慣」の緊急・重要マトリックス

「7つの習慣」というベストセラーの中に緊急・重要マトリックスというものがあります。「緊急・緊急でない」「重要・重要でない」の軸で4つの象限に分けられています。私たちは当たり前ながら「緊急かつ重要」なものに優先的に時間を割いています。日頃行っている自分の仕事のほとんどはこの第一領域に属するものでしょう。しかし、仕事の幅を広げよう、成長しようとする際に重要になってくるのが「緊急ではないが重要」という第二領域です。これに自ら取り組めればいいのですが、残念ながら私たちは、この領域を後回しにしようとしてしまいます。自己啓発や人間関係作りなどはとても大切なのですが、面倒という気持ちがあり、忙しいから、などの理由をつけて、ついつい先延ばしにしてしまいます。しかし、本来はこの「緊急ではないが重要」なものにこそ時間を割くべきなのです。この領域は、自分の成長のための自己投資だからです。
そして、多くの研修はこの第二領域に属するテーマを対象に開催されています。つまり、会社が行う研修は、社員にとって将来の自己投資となる時間を会社が作ってくれているのです。社員が仕事の幅を広げるなどの成長をしてくれれば会社にも大いにメリットがあるからです。この研修の意図を理解して真摯に取り組めば、必ず学びや気づきを得られるでしょう。

★なぜコミュニケーションの研修を受けるのか?
研修は会社が用意してくれた自己投資の機会だというお話をしました。そのテーマは会社が今の社員に必要だと考えているものが選ばれますが、その様々なテーマの中で、話し方などのコミュニケーション系のテーマを選ぶと、どのような効果があるのでしょうか。次にこのことについてお話します。
◎生産性を上げる
私たちの職場では、コミュニケーションがうまくいっていないことでトラブルが起こったり、仕事に支障が出たりすることがよくあります。「え、課長がやって欲しいと言われたことはこれじゃなかったんですか?」「早めにと言われたので今週中にやろうと思っていましたが、この資料作成は明日までだったんですか?」「ちょっとミスしたくらいであんな言い方しなくても。もうあの課長の下では働けないな」。こんなことがしょっちゅう起こっているのが現実です。今、日本全体で生産性の向上が課題となっていますが、こうしたコミュニケーション不全は生産性が上がらない大きな原因の一つだと思っています。もし課長の指示が一度で適切に部下に伝われば、資料作成の期日を明日までと明確に言っていれば、そして、ミスした部下が同じことをしないように上司が共感できる言葉で注意できれば、仕事の生産性は必ずや上がると思っています。
◎心理的安全性を確保する
一方で私たちはできるだけ安心して仕事をしたいと思っています。思い悩むことが少なければ少ないほど仕事に集中できます。また、何か不安になることが起こってもそれをカバーしてくれる組織なら、すぐに安心して仕事にに打ち込める状態に戻れるでしょう。こうした心理的安全性が高い職場は、お互いがお互いを理解している組織と言えます。そのために重要なことは、所属するメンバーのコミュニケーションスキルが高いことです。相手を傷つけずに改善点を指摘したり、お互いに良い点を誉め合ったり、感謝し合ったり。こうしたスキルは必要な知識があり、それを実践できる能力が身について初めて発揮できるものです。そうした知識と実践力の修得のために研修の場はとても有効なのです。
◎専門能力を最大限に発揮する
多くの社員がコミュニケーションに関する知識と実践力を身につけると、社員の専門能力をより適切にお客様に提供出来るようになります。どんなに素晴らしい専門能力があったとしても、それをお客様や他の社員に適切に伝える力がないと、その素晴らしさは的確に発揮できません。例えば、他社の営業が思いつかないような提案があったとしても、その話し方が極めて横柄だったり、話がヘタでお客様が理解できなかったとしたら、その提案は無価値です。パソコンに例えると、専門能力が各アプリで、コミュニケーション力はそれを支えるOS(Windowsなどのオペレーティングシステム)ということができるでしょう。このOSを鍛えることで、社員の持っている専門能力は2倍にも3倍にも発揮できるのです。

★相手の立場に立って物事を考える力
さて、ここまでコミュニケーション力を向上させる研修の重要性について述べてきました。最後にコミュニケーション力をあげる上で、最も大切なことをお伝えします。それは「相手の立場に立って物事を考える」ということです。私たちが話をする=コミュニケーションを取るのは、相手に自分の気持ちや考えに共感してもらったり、自分の言ったとおりに行動してもらったりすることが目的です。この目的実現のためには、相手が自分の話に納得してくれることがとても重要です。従って、私たちは相手が納得してくれる話し方や話すタイミングを考える必要がありますし、喜んで話を聞いてくれる人間関係を作る必要があります。そのために「相手の立場に立って物事を考える」ことがどうしても必要なのです。このことに留意した、話す場合、聞く場合のポイントを以下にかいつまんでご紹介します。
◎話す場合
「相手の立場に立って」話す際に大切なことは、自分勝手な話し方はしないということです。まず話し始める前に、今、この話は相手が聞いてくれそうな話題かどうかを考えましょう。誰しも、聞きたくない話や興味がない話をされるのは苦痛ですよね。まず話題とタイミングが適切かどうかを考えます。
次にこの話題について相手がどこまで知っているかを考えます。多くの上司への報告がそうであるように、相手がかなりの部分を知っている話ならまず結論を言って、話の要点だけを話すようにします。一方、雑談で自分の体験したことを話す時のように、話の内容を相手がほとんど知らない場合は、細かな部分も含めて具体的に話をします。よく知っていることを丁寧に説明されたり、知らないことを雑に話されたりすると、相手はイライラしてしまいます。どちらも相手の立場に立った話し方にはなりません。
そして、話を始めた際は一つのことを2分程度で話して、一旦相手の反応を見ます。相手が話を聞いてくれていて、かつ、理解できているようなら続けて話をします。もしそうでないなら、相手が聞いてくれるような話に変えたり、自分が話すのをやめて相手に話してもらうように仕向けるなど、少し方向転換をしましょう。
◎聞く場合
一方、「相手の立場に立って」聞く際に大切なことは、相手が気持ちよく話せる態度を示すことです。そのためには、まず相手の顔を見て聞きましょう。例えば、あなたがパソコンに向かって仕事をしている時、誰かが話しかけてきたら、パソコンの画面を見たまま話を聞く。よく見かける場面ですが、これでは相手はちゃんと聞いてくれているとは思えません。手を止めて相手の方に体と顔を向けて話を聞きましょう。この例のように、話を聞く際は相手の顔を見て聞くことが大切です。
また、相手の話を途中で遮ったりせず、最後まで聴くことも重要です。興味のない話や長い話を聞いていると途中で止めたくなりますが、これは相手にはとても不愉快です。そんな場合でもできるだけ遮らず、相手が一呼吸入れたところで言葉を挟むなど、嫌な気持ちがしないように配慮しましょう。
更に、話を聴いている時は、笑顔でうなづいたり、「うんうん」「へー」「なるほど」などのあいづちを打ちながら聞きます。特にオンラインで話していると、話し手は相手が聞いてくれているのかわかりにくいので、とても不安になります。そんな時にうなずき、あいづちは大きな威力を発揮しますので、ぜひ積極的にやってみてください。
★話し方やコミュニケーション研修も承っています
さて、今回は会社が外部研修を行う事の意味や、その中で話し方やコミュニケーションをテーマに選ぶ効果などをお話しました。日本話し方センターでは、今回お話した話し方やコミュニケーション研修も承っています。会社様のニーズに応じて柔軟にカリキュラムを作成してご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください!