日本話し方センターの話し方教室では、話す態度、声の出し方、話の組み立て方、抑揚のつけ方、話に表れる心の持ち方など、話し方全般についてお伝えし、それを実習で実践してもらっています。
話し方の上達は、自転車に乗れるようになったり、泳げるようになったりするのと同じで、身体に覚えさせるトレーニングが必要です。
このため、話し方教室では2分間のスピーチ実習を行っています。

受講生が話されるスピーチを聞いていると、初めのうちは、表面的な事実を中心に話される方が圧倒的に多いです。
例えば、失敗談というテーマなら、そのあらすじだけを示せばこのようなスピーチをされます。
「お酒を飲み過ぎて記憶を失い、カバンをなくしてしまった。
駅に問い合わせたところ、誰かが拾って駅に届けてくれていた。
ホッとした。」
この例では、出来事の経緯の説明に力点が置かれています。
ホッとした、という気持ちは述べられていますが、もう少しどんな気持ちだったのか、知りたいところです。
こうした話は、残念ながら、今一つ面白みに欠けますし、聞き手の印象にも残りません。
なので、教室で受講生が上のような話をした場合、講師はこういう質問をします。
「お酒をどれくらい飲みましたか?」
「何時頃まで飲んでいたのですか?」
「カバンには何が入っていたのですか?」
「カバンがないと気がついたとき、どう思いましたか?」
「駅に問い合わせる時、どんな気持ちでしたか?」
「見つかった時、心の中でどう思いましたか?」
「これからどうしようと思っていますか?」
そして、受講生が答えたことを話に盛り込んでください、とアドバイスします。
話で大切なことは、聞き手の頭の中にイメージが浮かぶように話す、ということです。
人は頭の中でイメージを作ることで初めて話を理解できるのです。
では、イメージを持ってもらうために必要なことは何でしょうか。
それは、具体的に話す、ということです。
先に紹介した講師の質問は、この具体性を掘り起こすために行ったものです。
お酒を飲み過ぎた、と聞いてもイメージは湧きにくいですが、ウィスキーをボトル半分くらい飲んだ、と聞けば、ああ、それは結構飲んだなぁ、とイメージが湧きます。
また、カバンをなくした事に気づいた場面を
「うわぁ、どうしよう!財布もスマホも会社の大切な書類も入っていたのに!ああ、どうしよう!どうしよう!」
とその時の感情を話せば、聞き手も「ああ、すごくあわてたんだなぁ、そりゃそうだよなぁ」と共感しやすくなります。
さらに言えば、ホッとしたとき、きっともう二度とこんな思いはしたくない、と考えたに違いありません。
そのために、これからどうするのか、ということを具体的に話せば引き締まった話にすることができます。
ところで、聞き手が頭の中でイメージできるように話すことは、スピーチに限らず、ビジネストークでもとても重要です。
上司への報告、お客様への説明でも「何を言っているのかよくわからない」と言われてしまう大きな原因の一つが、話が抽象的だ、ということです。
できるだけ具体的に話をすれば、納得感はグッと高まります。
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