目次

1.静かな会議

私は数年前からファシリテーションセミナーの講師をしています。

先日開催したセミナーに参加したMさんは、セミナー途中で私にこんな相談をされました。

「私の会社では会議がよく開かれるのですが、出席者が全く意見を言わないのです。

いつも議長や議案の提案者が一方的に話して終わっています。

なので、どの会議もかなり静かです。

どうすれば出席者から意見が出るようになるでしょうか」

確かに、せっかく多くの人が時間を割いて集まっているのに、発言が出ないのはとても勿体ないことです。

 

私はMさんに次の様に答えました。

「会議で意見が出ない原因は幾つかあります。

そのテーマに対して当事者意識が薄い人ばかり出席していたら、そもそも言うべき意見がない、ということになります。

また、誰かが意見を言うと、それを否定する人がいても発言しにくいでしょう。

しかし、多くの場合、意見が出ない原因は、話し合う論点が曖昧だということにあります」

私の話を聞いたMさんは、

「ああ、確かにそれはありますね。私も会議に出ていて、何についてどういう意見を言えばいいのかわからないことがあります」

と共感してくれました。

2.論点が曖昧だと発言できない

会議における論点が曖昧な例を示してみましょう。

あなたが出席した会議の冒頭で、次のような発言があったとします。

「私は、残業時間を減らすために、一人ひとりが仕事の改善を考える必要があると思っています。

そうしないと、仕事の効率化は実現できません。

そして、そのために社内に提案制度を作る必要があると考えています。

これについて、皆さんの意見を聞かせてください」

さて、このように問い掛けられたら、あなたは発言できるでしょうか?

 

この問い掛けられたことに特に違和感を感じなければ「賛成です」と、簡単に答えるでしょう。

しかし、しっかりと考えて意見を言おうとした場合、「何だか答えにくいなぁ」と思うはずです。

それは、まさに論点が曖昧な問い掛けだからです。

この問い掛けが曖昧な理由は、この発言の中に3つの論点が混在しているからです。

  • ① 残業時間を減らすためには、仕事の効率化を実現する必要があるのではないか
  • ② 仕事の効率化は、一人ひとりが仕事の改善を考えないと実現できないのではないか
  • ③一人ひとりが 仕事の改善を考えるために、社内に提案制度を作ることが有効ではないか

そして3つの論点があるにもかかわらず、「これについて意見を聞かせてください」と問いかけています。

出席者は、意見を促されても、どの論点で話せばいいのかわからず、思考が停止してしまいます。

意見を言おうにも言えなくなってしまうのです。

3.指示代名詞には要注意

特に論点を曖昧にしてしまうものが、「これについて」などの指示代名詞です。

「これ、それ、あれ」などの指示代名詞は、我々の会話の中で実に頻繁に使われています。

会議でこの指示代名詞が使われると、一連の発言の中のどれを示しているのか曖昧な場合がとても多いのです。

従って、私は会議で指示代名詞が使われると必ず

「今、『これについて』と仰いましたが、その『これ』は何を指していますか?」

と確認します。

一方で、「これについて」という問い掛けに対して発言する人はいます。

そういう人は「これ」がどれを指しているのかは気にせず、上の発言の中で自分が気になったことについて発言しているのです。

「提案制度はいいけど提案が出るような工夫がいると思います」

「仕事の効率化のためには事務のIT化が必要です」

「そもそも残業削減は、何のために行うのでしょうか」

こうした意見や質問が出るのはよいことですが、論点が定まらないままバラバラに発言されます。

その結果、意見をとりまとめて結論を導くことが非常に難しくなります。

 

4.論点を具体的にする

では、どのようにすれば発言が出て、効果的な議論ができるのでしょうか。

それは、議論できるように論点を分ければいいのです。

上の例では①~③の3つの論点があることを述べました。

この論点を分けて、順に議論していくのです。

まず①について異論がないか確認します。

異論がないようなら②でよいか、という論点に移ります。

そして②で良ければ、最後に③を論点として議論します。

この順番を意識することで、はじめて論理的な議論ができます。

ところで、論点についてはもう一つ注意することがあります。

それは論点を具体的にすることです。

例えば、

「今期の営業目標達成について意見をください」

と言われても少し漠然としています。

そのため、思いつくままに色々な面での話が出て、収拾がつかなくなる可能性もあります。

しかし、

「今期の営業目標を達成するために、どういうお客様をメインターゲットにすべきか意見をください」

と言われれば発言しやすくなるでしょう。

具体的とは、「出席者の頭の中にイメージが浮かぶ」レベルです。

「どういうお客様を~」という問い掛けで、出席者は頭の中に、それぞれのお客様のイメージを浮かべることができます。

先に述べた「論点を分ける」ということも、「論点を具体的にする」ことの一つのやり方なのです。

 

5.会議を効果的に進めるコツを学びましょう

このように会議においては、論点を具体的に設定することがとても重要です。

それ以外にもには幾つかのポイントがあります。

日本話し方センターでは、今般、会議を効率的かつ効果的に進めるためのスキルを学ぶ「ファシリテーションコース」を開設しました。

私が9年の間、色々なところで開催してきたセミナーの内容をアレンジして全6回のコースにしました。

知識をお伝えした後、何度も模擬会議を行って、実際に会議を進めるコツを身につけていただけます。

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