私たちは、日常判断せねばならないことが絶えず起こっています。一説によると、人が一日に判断する回数は3万5千回とも言われています。これだけの回数無意識に判断を繰り返しているなら、私たちは判断することに相当のストレスを抱えていることになりますね。

私も時々人から悩みごとの相談を受けることがあります。しかし、そうした場合によく思うことは「ああ、もう自分の中で結論は出ているんだな」いうことです。「AとBのどちらにしたらいいか、悩んでいるんです」という人の話を聞いていると、明らかに自分ではBに決めている、ということがよくあるのです。つまり、ご自身は「悩んでいる」と思っていても、実は悩んでいるのではなく「これにしよう」と決断する決め手に欠けている、というのが実態のようなのです。

私自身、過去を振り返っても結論は出ているが決め手に欠けて決断に二の足を踏んでいたことが実によくあります。だから多くの人が何かを決めるために背中を押してもらうものを求めている、探している、という感覚はよくわかります。
大昔はそれが占いだったのでしょう。太古の中国では戦争を始める前に必ず吉凶を占ったそうです。しかし、多くの場合は吉が出るまで占いを繰り返したそうですから、これなども戦争をするという結論は出ているが背中を押すものを求めている典型例なのでしょう。今でも手相などの占いによりどころを求める人は少なくありません。しかし、大半は占いなどには頼らずに自分で納得して決断する、ということが圧倒的に多いですね。では、人から相談を受けた場合、背中を押してあげるにはどうすればいいでしょうか。それが「質問」なのです。

先日、ベーシックコースを受講している就活生のHさんに近況を尋ねたところ、こんな会話になりました。
H:「今、警備やセキュリティ関連の業界2社から内定をもらっています。どちらも印象はいいのですがその業界を監督する官庁にも興味があるので、正直、迷っています。」
私:「そうですか。内定をもらっている2社や監督官庁にはどんな印象がありますか?」
H:「A社はとてもフレンドリーで雰囲気がよさそうです。B社はやっていることが革新的でワクワクしますが、社風は少し冷たいですね。監督官庁は大きな仕事ができそうなのがとても魅力的ですが、やはり官僚的だな、と感じる応対がありました。」
私:「なるほど。Hさんはよく組織を観察して的確な意見を持っていますね。では最終的に1社に決める場合に一番大切にしたい要素は何なんでしょうね?」
H:「ん~。今自分で話していて気付いたのですが、私はどうも『この人達と一緒に働きたい!』と思うところを選びそうな気がしてきました。そうするとA社かな。A社は業務面でもワクワク感がありますしね・・・」
私は質問をしただけですが、Hさんは自らの言葉で自らの判断基準に気がついたようでした。

悩んだり迷ったりしている人に「絶対にこっちの方がいいよ」とか「それは最悪だからやめた方がいいよ」と言っても、「そうかなぁ・・・」という反応になり決め手にはならないでしょう。人は自分の感情が動いて納得して初めて決断できますし、行動できます。悩んでいる人から相談されたら、ぜひその人に寄り添うようにして質問をしてあげてください。きっと自ら決め手なることに気付いてもらえると思います。