1年ほど前のことです。
新幹線で移動する車中、通路をはさんだ反対側に仕事を終えた会社員4人が、前の席を180度回転させ、向かい合わせで話していました。
まだコロナ感染拡大前のことです。
仕事を終えた帰りということもあって、お酒を飲みながら大きな声で話をしているので、その話がいやでも私の耳に聞こえてきます。
おつまみを食べ、お酒を飲みながら話しているのは、主に上司と思われる人でした。

「今日のような取引先へのアプローチの仕方はね、~」という感じで、どうもご自身の仕事上の知恵を語っているようです。
話を聞いている3人は部下なのでしょう。
上司の方を見ながらリラックスした様子でうなずいて聞いていますが、何となく話につきあっている、という雰囲気です。
しばらく語った後、上司が「ちょっとトイレ」と立っていきました。
想像通り、残された部下3人は、やれやれ、という雰囲気です。
悪口ではないようですが、「あの人はお酒ちゃんぽんするとすぐ酔っ払うよね~」などと上司の話をしています。
やがて、部下同士で仕事の話をし始めました。
話に熱が入り、お互いに盛んに意見を言い合っています。
しばらくして、上司が戻ってきました。
元通り、お酒を飲みながらまた語り始めます。
すると、今回は部下の人たちは黙って聞いているのではなく、上司に対して自分の意見を言っています。
口論などではなく、今の職場をより良くするための建設的な意見交換をしているようです。
きっと、部下の人たちは、上司がいない間にお互いに話をしたことで気持ちがほぐれ、上司に意見が言いやすいテンションになったのでしょう。
とても和気あいあいとしたいい雰囲気で話をしていました。
私はこの様子を見ていて、上司はまず部下に話をするように仕向けるべきだな、と思いました。
上司が部下の話を肯定的に聞けば、部下は安心して話ができます。
最近よく耳にする組織の「心理的安全性」もこうした行動から生まれてくるのだと思います。
ところで、ファシリテーション(会議やプロジェクトなどの集団活動がスムーズに進み成果が上がるように支援すること)の世界では、「ランク」ということばがあります。
これは、一般的に、部下よりも上司の方が、年下よりも年上の方が、女性よりも男性の方が、発言力が強い、というものです。
本来、こうしたことはあってはならないものですが、残念ながらこうした傾向があるのは事実です。
従って、発言力の強い立場にある上司などは、そうした現実を認識して、自分の話は控えるべきです。
上司が、部下の話を十分に聞き、その考えや感じていることに沿って自分の考えを言えば、建設的な話ができるでしょう。
話は一方的にしても通じるとは限りません。
相手が考えていること、感じていることを理解し、それに沿って話すことで相手は納得し、共感できます。
話すこと、聞くことの双方のスキルを磨くことで話は伝わるものになっていくのです。
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