最近、コロナ感染対策に関する記者会見などで政治家の人が発表している姿をよく見ます。しかし、いつも気になっていることがあります。それはほとんど人がほぼ原稿から顔を上げずに、書いてあることを読み上げているだけだからです。この読み上げている映像を見ると、ああ、この人は自分が考えていることではなく官僚やスタッフが作った文章をただただ読み上げているんだな、ということが丸わかりです。そうした会見にはその政治家のパーソナリティは感じられません。もったいないことだなぁ、と思います。
また、この間テレビのニュース番組を見ていると地方局のアナウンサーが全国に流れるニュースを伝えていました。外出自粛の中、その地方の経済を活性化するユニークな取組を全国に紹介する番組でした。ところが、そのアナウンサーは初めて全国放送に出るからでしょうか、とても緊張している様子なのです。笑顔がなく顔もこわばっているように感じました。ニュースを読み始めると下に置いてある原稿を頻繁に見ながら話しています。ついには半分以上原稿を見ながら話し始めました。大丈夫かな、最後まで読めるかな、とこちらもドキドキしながら画面を見ていました。

こうした光景は私たちの身近でもよくお目にかかります。会社や学校の行事での来賓のあいさつ、結婚式での来賓の祝辞など、かなりの人が原稿を読み上げています。その姿を見て、立派だな、と思う人は少ないでしょう。
日本話し方センターのベーシックコースや2日間集中セミナーでも、スピーチ実習で原稿を見ながら話す人がいます。そうした時、講師は必ず次のようなアドバイスをします。
「突然話が飛ぶこともあるので、スピーチ原稿は手元に持っておいた方がいいです。次に話すことがわからなくなった時は原稿を見て構いません。しかし、原稿を見たまま話をしないでください。話す内容を確認したら聞き手の方に目を向けてから話しを続けてください。」
話しをする時は、聞き手の方を見るのが大原則です。原稿に目を落としたまま話すことは、自信がない、聞き手のことを見ていない、棒読みになる、など様々なマイナス要素があります。何よりも書いてあるものを読んでいるのでは話し手自身の意思を感じることが出来ません。話しをするということは自分の考えや意思を伝える行為です。なので、原稿に目を落としたまま話すことは絶対にしてはいけません。
こう言うと、でも話すことは原稿に書いてあるのでそれを見ないと話しができないじゃないか、と思う人もいるでしょう。人前で話しをする際は、事前の準備をしっかりとする、ということが大前提です。基本的に、原稿がなくても自分の言いたいことは言えるまで原稿を練り込み、声に出して練習すべきです。それでも本番で話が飛んでしまうことがあるので原稿は手元に置くべきなのです。手元の原稿を見れば次に話すことは確認できます。ああ、こういうことを話すんだった、と確認できたら原稿から目を上げて堂々と話しを続けましょう。
話は、ことば以上に見た目で聞かれます。まず話す態度がしっかりしていないと、この人の話を聞こう、とは思ってもらえません。そのためには、しっかりと事前準備をする、話す時は原稿から目を離して話すということを心がけてください。